渡良瀬橋について
渡良瀬橋(わたらせばし)は栃木県足利市にある有名な橋です。
一級河川である渡良瀬川にかかる大きな橋ですが一見すると、特に何か大きな特徴がある橋ではありません。
しかし、バブル期に活躍した女性歌手・森高千里さんが歌った「渡良瀬橋」という曲によって、ほとんど一般の人には知られていなかった「渡良瀬橋」は一気に有名な橋となり、多くの人が関心を持つ橋となりました。
「渡良瀬橋で見る夕日をあなたはとても好きだったわ~」から始まる郷愁を誘うような切ないメロディーで、歌詞の通りの情景が目に浮かぶような森高千里さんのこの歌は、その後、歌手の松浦亜弥さんによってもカバーされ、ヒットしました。この森高千里さんが作詞した「渡良瀬橋」の曲のおかげで、渡良瀬橋の知名度がぐんと上がり、現在は足利の有名な観光スポットの一つとなっています。
北関東を流れる利根川の支流である渡良瀬川は、利根川の支流の中でも第3位の長さを持つ大きな川です。
足尾の山を水源としている渡良瀬川は、桐生市、足利市、佐野市と流れていき、やがて利根川に合流していきます。
その川にかかる「下路平行弦6連ワーレントラス橋」と呼ばれる渡良瀬橋は、橋の長さが243..27メートルで幅が5.5メートルあります。
この「トラス」とは細長い部材を三角形につないでいる構造で、それの繰り返しで桁を構成することを指し、渡良瀬橋の大きな特徴となっています。
足利市民の毎日の生活を支える渡良瀬橋には、古い歴史があります。
現在、足利市の中央を流れている渡良瀬川はかつて、暴れ川として知られていました。
暴れ川であることから橋をかけるのは難しいとされ、江戸時代には渡し舟が活躍し、水上交通が発展したといいます。
明治に入った1902年に木製のアーチ橋が架けられ、1917年にその橋が架け替えられました。
その後、1934年に大日本帝国陸軍の大規模な演習が足利で開催されることになり、古い橋では陸軍の車両が通ることができないということで、急遽、鉄製の頑丈な橋を架けることとなりました。
現在、渡良瀬川に架かっている橋の中で渡良瀬橋は、永久橋(ある程度長期間、架け替えが必要ない橋)としては最も古いとされています。
河川敷から渡良瀬橋を眺めると確かにその古い歴史の重みのようなものが感じられます。
かつては地元の人の間でも、「渡良瀬橋」という名前はあまり浸透しておらず、別名の「鉄橋(てっきょう)」という名前で呼ばれていたそうです。
足利の街の中心に架かる橋は3つあり、それぞれ「田中橋」、「中橋」、「鉄橋」と呼ばれ、鉄橋が現在の渡良瀬橋を指していました。
確かに、渡良瀬橋は見た目にも鉄さびが目立っており、鉄道の橋のようで決して美しい印象の橋、というわけではありませんでした。
特に足利市民にとっても思い入れのある橋ではなかったようです。
それが、森高千里さんの歌のおかげで、渡良瀬橋の存在が多くの人に知れ渡るようになり、現在に至ります。
右岸にある田中町と左岸にある通四丁目を結んでいる渡良瀬橋は、繊維の町として発展してきた足利にとって大きな存在でした。
足利は繊維の町として栄えてきましたが、その歴史は大変古く、奈良時代からだと言われています。
かつて「ふとぎぬ」と呼ばれた織物を都へ献進したと伝わっており、奈良の大仏開眼の折にも東大寺の御領地として織物が足利から届けられたそうです。
江戸時代には足利の織物は、絹糸で作られるようになり、足利の織物は「足利織」と呼ばれ、全国的に出荷され、その存在が知られるようになりました。
明治時代に入り、織物業界は近代化し、足利で作られた製品が海外へも輸出されるようになっていきました。
また、同時に足利では両毛鉄道が開通し、さらに街は発展をとげました。
織物の町として栄えてきた足利ですが、戦後は、日本国内でも西洋の洋服が主流となっていき、徐々に織物産業が衰退していくことになります。
しかし、再び昭和30年代から新興繊維産業が発展し、トリコットと呼ばれる生地が生産されるようになります。
肌着や靴下などに使われるニット生地の代表的なたて編みの合成繊維がトリコットであり、そのトリコットの足利での生産量が日本一になったこともありました。
そんな繊維の街・足利とともに、渡良瀬橋は年月を重ねてきたのです。
森高千里さんの「渡良瀬橋」の曲のおかげで全国的にも知名度が上がった足利市にある渡良瀬橋。
この歌の歌詞にも出てくる通り、天気の良い夕暮れ時には、美しい夕日を見ることができるスポットとして知られています。
渡良瀬川と渡良瀬橋の向こうにゆっくりと沈んでいく夕陽はとても美しく、ロマンチックな風景です。
誰もがずっと沈んでいく夕日を眺めていたくなるでしょう。
多くの人に愛されている渡良瀬橋を美しく保存するために足利市も力をいれており、橋の外観をきれいに塗装したり、夜はライトアップしたりしています。
渡良瀬橋は足利市民の生活を支えるだけでなく、街のシンボルとして現在も大きな役目を果たしているのです。
渡良瀬橋の見どころ
渡良瀬橋のある栃木県足利市は古い歴史があり、美しい花や緑に囲まれた自然あふれるスポットが多い街です。
足利市や渡良瀬橋を訪れるなら、まずは森高千里さんの名曲「渡良瀬橋」を聞いてみるとよいでしょう。
この歌の歌詞には、実際に渡良瀬橋周辺にあるスポットがいくつか登場します。
渡良瀬川近くの北側の道には森高千里さんの「渡良瀬橋」の歌詞が書かれた記念碑があるのでぜひ行ってみるとよいでしょう。
ボタンを押すと、渡良瀬川のメロディが流れてきます。
渡良瀬橋を訪れるなら一番のおすすめの時間帯はやはり夕暮れ時です。
「渡良瀬橋」の曲の中にも登場するように、渡良瀬川の河川敷から見る渡良瀬橋と、その向こうに沈んでいく夕陽は本当に美しくきれいです。
渡良瀬橋は、普段はあまり特徴のない普通の橋に見えますが、夕暮れ時はなんとも言えない美しさで、歌の世界観にも入ることができるでしょう。
名曲「渡良瀬橋」に登場する橋を見てみたいという理由で渡良瀬橋を訪れる人もいます。
名曲「渡良瀬橋」に出てくる場所の一つに「八雲神社」があります。
「八雲神社でお参りするとあなたのことを思い出すの~」というフレーズで歌詞に登場する八雲神社は、実際に渡良瀬橋のすぐ近くにあります。
八雲神社の歴史は古く、平安時代に創建されたと言われています。
森高千里さんの歌がヒットした時には多くのファンが訪れたそうですが、2012年に火災で焼失するといった残念なことがありました。
その際、復興再建委員会ができ、森高千里さんがコンサートで支援を呼びかけるなどして、神社が再建される運びとなったそうです。
現在の社は、伊勢神宮の式年遷宮で解体された社殿を譲り受けたもので小さいながらもとても厳かで雰囲気のある神社となっています。
また、夕暮れ時が美しい渡良瀬橋ですが、さらに街全体を見下ろすことができ、暮れてゆく足利の街を見ることができるおすすめのスポットが、織姫公園です。
こちらは夜景100選にも登録されており、地元のデートスポットとしても人気があります。
公園の北側にある鏡岩展望台からは関東平野も一望することができ、昼夜それぞれ景色を楽しめる公園です。
自然豊かな公園内には桜の木が多く植えられており、お花見シーズンには多くの花見客で賑わいます。
そして織姫公園を訪れたら合わせて訪れたいのが足利織姫神社です。
織姫公園に隣接している神社で、朱塗りの社殿がとても美しい風情ある神社です。
「足利音頭」の歌詞にも「足利来るなら織姫様の赤いお宮を目じるし」と登場する地元ゆかりの神社である足利織姫神社は、縁結びの神様としても知られています。
渡良瀬橋の周辺
渡良瀬橋のある足利市の中でも、特に有名な観光スポットが「あしかがフラワーパーク」です。
2018年にはあしかがフラワーパーク駅ができて、さらにアクセス便利になりました。
何といっても有名なのが、あしかがフラワーパークのシンボルとも言える、藤(ふじ)の花です。
様々な種類の藤の花が咲く4月中旬から5月中旬かけては、毎年多くの人が訪れます。
藤のトンネルは栃木県天然記念物に指定されていて、満開シーズンには藤まつりも開催されます。
また、秋に行われる大規模イルミネーションも人気があり、こちらも多くの人で賑わいます。
あしかがフラワーパークのイルミネーションは日本三大イルミネーションにも選ばれています。
春夏秋冬いつ訪れても楽しめる人気スポットです。
【あしかがフラワーパーク】
〒329-4216 栃木県足利市迫間町607
TEL.0284-91-4939 FAX.0284-91-4587
また、足利市には日本で最も古い学校である「史跡足利学校跡」があることで知られています。
足利学校の歴史は大変古く、創建についてははっきりしていませんが、奈良時代や平安時代という説もあります。
室町時代からの歴史ははっきりと残っており、上杉憲実が学校を整備し、多くの学生を養成したと言われています。
学校の存在はあのフランシスコ・ザビエルによって世界にも紹介されました。
歴史ある学校跡が見学できるよう一般開放されています。平成27年4月には日本遺産に認定されました。
【史跡足利学校跡】
〒326-0813 栃木県足利市昌平町2338
渡良瀬橋へのアクセス方法
渡良瀬橋は栃木県足利市の中央を流れる渡良瀬川にかかっている橋です。
そして、森高千里さんの「渡良瀬橋」の歌碑は渡良瀬橋の北側の道路に面したところにあります。
「渡良瀬橋」の見物には自動車、公共交通機関(電車)を利用して行くことができます。
「渡良瀬橋」 所在地:〒326-0814 足利市通3丁目 児童公園南の歩道上
東武伊勢崎線「足利市駅」から渡良瀬橋まで西へ約500mの場所にあります。
・公共交通機関(電車)の場合
電車で行く場合は、駅から歩いていくことができます。渡良瀬橋まで向かう途中は歩道があるので歩きやすいです。
西側に並行して、歩行者・自転車専用橋があります。
JR両毛線「足利駅」から渡良瀬橋まで徒歩約15分、
東武伊勢崎線「足利市駅」から渡良瀬橋まで徒歩約10分
足利駅と足利市駅と名前が似ている駅なので注意が必要です。
(自動車の場合)
渡良瀬橋は県道5号足利太田線の一部となります。
北関東自動車道 足利インターから約15分
北関東自動車道 太田桐生インターから約20分
東北自動車道 佐野藤岡インターから約35分
なお渡良瀬橋に駐車場はありません。 歌碑の見学や夕日を眺めに訪れる際には、近隣の駐車場に駐車して、徒歩で向かうことをおすすめします。